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「末子さんが作ったこの漬け物と一緒に食べられるとよい。
食が進む。」
山縣の押しに負けたのか、栗色の髪の男は渋々頷いた。
そんな光景を目尻に、千尋は考えた。
自分は確か、とんでもなく深刻な状況に陥っているはずなのだ。
そう、それは自分にとって、人生の分かれ道と同じくらい深刻な…。
「イタッ。」
何かが背中にぶつかったことによって、千尋の思考はそこで一旦中断させられた。
「すみましぇん。」
背中越しに見えたのは、まだ小さな男の子。
何本もの箸を両手で持っている。
「あ、いえ。
お気遣いなく。」
男の子は一つ頷くと、再びテーブルに箸を並べ始めた。
チマチマと歩く姿に自然と頬が緩む。
先程まで考えていた深刻な事態が一瞬、彼方に飛びかけた時、扉がバタンと乱暴に開けられた。
入って来たのは、超ド級のチャラ男。
「高杉、扉はもっと静かに閉めろ。
壊れたらお前のポケットマネーから修理代を出させるぞ。」
先程の男の子よりやや年上だと思われる少年が、チャラ男を咎めた。
ギロリと睨まれたが、ビクリともしない。
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