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「俊介に払わせるから問題ない。」
俊介とおぼしき青年の顔が一瞬にして真っ青になった。
「ならばこのアパートの破損個所全ての修理代を出させなさい。
崩壊間近だ。
それに、これから梅雨の時期だ。
見ろ、このバケツの数を。
これも全て高杉、お前が暴れるからだ。」
およそ可愛らしい外見には似つかわしくない口調で少年は、チャラ男に言い放つ。
「うるさいうるさい。
久坂のくせに。
じゃが、お前は分かっとらん。
このボロさにこそ、趣があるのじゃ。」
「日々の生活に多大なる支障をきたすような趣などいるわけなかろう。
だから高杉は頭がふにゃふにゃなのだよ。」
「久坂に言われたくない。
お前は頭がカチカチじゃ。」
室内の温度が数度確実に下がった。
ところで、千尋の困惑はやはり、増すばかりであった。
まず、どこから考えればいいのか分からない。
事態が深刻すぎて、もうどうすればいいのか分からない。
なのに、周りはいたって平和的で(一部例外有り)、何だかこの空間にいると、自分の悩みなど、どうでもいいような気がしてしまう。
「って…よくない!!」
いきなりテーブルを叩いて立ち上がった千尋に、その場の全員の視線が集まった。
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