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「どうしたんじゃ?」
高杉が目を丸くしている。
「あ…いや、だから。」
千尋はもごもごと口ごもる。
とても深刻な事なのだ。
しかしあまりにも深刻すぎて何から話せばよいのか分からない。
「何ですか。
はっきりしなさい。」
久坂に急かされ、千尋は更に口をパクパクさせる。
「無理しなくていいですよ。
ゆっくり話して下さい。」
木戸に優しく言われ、千尋はようやくボソボソと言葉を発した。
「あの……一体、ここはどこで、あなた方は誰なのですか?」
千尋はとてつもなく深刻な事を口にした。
淡い髪の男が穏やかな笑みを浮かべながら千尋の顔を覗き込んだ。
「ここは松下アパートです。
そして私は管理人の吉田虎次郎ですよ。
さぁ皆さん、千尋さんに改めて自己紹介を……。」
「いやいやいや、待ってください!!
私、自分で言うのもなんですけど、確実に記憶喪失とか言うやつですよ!!
そこへのリアクションとかはないんですかっ!?」
虎次郎がポンと手を打つ。
「なるほど、リアクションをして欲しかったのですか。」
「いえ、そういうわけじゃないですけど…。」
「リアクションがないと寂しいですものねぇ。」
千尋にとっては不幸な事にここには良心的なツッコミは常に不在である。
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