石の箱

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その日から突然、姿を消した少年を探して少年の両親は莫大な黄金を使い果たしたが、結局少年を見つけること出来なかった。愛しき愛息を亡くした商人もまた、その後は行方知れずになり、広大で豪華な豪邸も廃墟と化して消え去っていった。 月日は流れ、少年のことも、この商人のことも次第に悲しきことに人々の記憶からも消え去っていく。 月日は更に流れゆき、千年の時を数えたある日。 地中に眠る不思議な石の箱が発見された。 箱には文字らしきものが刻まれ、高貴な方の石官ではないかと思われた。しかし、どのようなことをしても、その石の箱を開けることが出来なかった。 開けることの出来ぬままに、石の箱はその神秘性が高く評価され美術館で展示されることになった。 一時期、人々の好奇の的になったが、やがて、またその存在さえも忘れさられ、更に千年の月日が流れた。 そんなある日、石の箱の前に立つ青年がいた。青年は静かに呪文のようなものを唱えた。 すると、石の箱の開かずの蓋と思われた蓋がゆっくりと動きだした。 『目覚めよ。我がシモベ。汝自身が望みし封印を汝自身でみよ。』 青年が放った言葉で 箱の中にいた少年は目覚めた。 少年は何が起こったのかさえ分からなかったが、周りを見渡し、 『あっ、あなたは…、』少年は青年の姿をみつけて言った。 『ボクは永遠の命を授かったのでしょうか?』
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