石の箱

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『ああ、キミには、ちゃんと、永遠の命を与えた。キミは知らないだろうが、あれから三千年の月日が流れているんだよ。』 『三千年、凄い。』少年は興奮気味に言いながら箱から出ようとした。 その時、全身に電流が流れたかのように強い衝撃が襲った。 『危ないところだった。』青年が言った。 『どうなってるんだ』少年は苛立ちと共に言った。 『キミはその箱から出ることは出来ないのさ』 『えっ、どうして』 『その箱がキミにとっての生命維持装置なんだよ。その箱から一歩でも、出ればキミは死ぬ。』 『そんな、』 『ふん。全てキミが望んだことだ。約束通り、キミはあの10代の輝かしき一番の美貌を維持しながら永遠の命を手に入れたわけだ。但し、その箱からは出れないし、残念ながら、キミのことを知るものは、この世界には1人もいない。だれもキミの存在を知らないし、認めない。それで生きていると言えようか。なんの為の美貌であり何の為の永遠の命だと言えようか。 そう。キミは生きながら死んだ。ただ1人の人間なんだよ。』青年はあの妖しく妖艶な笑みを浮かべながら笑った。『でも、あなたが』少年はすがる思いで青年に言った。 『ふん。キミはまだ分からないのかい。人間が三千年も、変わらぬ姿で居れるわけがないじゃないか。そうだろう。そうさ。私はキミ達人間から、こう呼ばれているよ。《悪魔》とね。』 そうして再び、笑みを浮かべた。
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