1章 絶望と希望

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「うぅ……。あれぇ? ここはぁ……。」 どれくらい時間が経ったのだろうか。目が覚めると俯けに倒れており、目前には草原が広がっていた。状況が掴めず困惑していると、正面に街が見える。 「……ティルレイ? あれぇ? 私達ルファナに負けて、それからどうしたんだっけぇ?」 私は服の汚れを払って立ち上がり、首を傾げる。 辺りを見渡すと皆が俯けに倒れているのに気付き、全身から血の気が引いていくのがわかる。 「千草、儚音、シェリルちゃん、フィン君、ルシカさん、クロウ、ネイリィ!! 起きてぇ!!」 外傷はないものの久遠の姿が頭をよぎり、私は叫びながら皆の体を必死に揺らす。 しかしどんなに叫んでも、どんなに体を揺らしても、皆は目を閉じたまま動かない。 「嘘……嘘!! そんなぁ……!!」 だんだん視界が歪んでいき、震える足に力が入らなくなり、私はがっくりと肩を落とし地面に崩れ落ちる。 「皆……。お願いだから、返事をしてよぉ……。」 顔をくしゃくしゃにし、とめどなく溢れる涙を拭わず縋るように呟くと、千草の体が僅かに動いた気がした。 「千草……? 千草ぁ!!」 急いで千草に駆け寄り体を揺すってみると、今度は瞼が動いた。 「……あれ? 空……?」 そして千草はゆっくりと顔を上げ、私の顔を目が半分閉じた状態で見つめてくる。 そして頭を抑えながら立ち上がり、私の泣き腫らした顔を見て驚く。 「空!? どうし……。」 「千草ぁぁぁぁぁ!!」 この時の私は酷い顔をしていたと思うが、そんな事はどうでもよかった。 「キャッ!?」 千草の腰に手を回し抱きつくと、千草は少しよろけながらも私を受け止めてくれた。 「わあぁぁぁぁぁん!!」 千草の胸に顔をうずめ、歓喜の涙を流し大声で泣くと、千草は黙って優しく頭を撫でてくれた。
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