1章 絶望と希望

3/31
前へ
/363ページ
次へ
「落ち着いた?」 「うん……。」 あれからしばらく泣きじゃくり、千草から離れる。すると無性に恥ずかしくなり、涙を拭いながら俯く。 「ご、ごめんねぇ。安心したら、涙が止まらなくなっちゃってぇ。」 涙を拭い顔を上げると、千草は私と同じ目線になるように屈み、優しい声で話しかけてくる。 「別に構わないわよ。それより、何で泣いてたの?」 私は思わず表情を曇らせてしまうが、目線を逸らさず千草を見る。 「いくら皆に呼びかけても目を覚まさないし、久遠がいなくなったばかりだから、一人ぼっちになっちゃったかと思ってぇ……。」 私が久遠、と言った瞬間、千草はビクッと体を震わせ顔をしかめる。だがそれも一瞬で、すぐに表情を戻す。 「そうだったの。ごめんね、空。不安にさせちゃって。」 千草が心配そうな顔をして私を見てくるが、私は顔を横に振る。 「ううん、千草が悪いわけじゃないからぁ。それよりぃ……。」 「どうしたの?」 前髪の先を指でいじくりながら俯くと、千草は首を傾げる。 「私が大泣きした事、皆には内緒にしてくれないかなぁ? 恥ずかしいからぁ……。」 私が小さく呟くと千草は苦笑いを浮かべ、頬をかいている。 「……空。非常に言いにくいんだけど、皆起きてるわよ?」 「えっ!?」 目を見開き勢いよく振り返ると、皆が気まずそうに立っていた。 「アハハ……。ごめんね、空っち。聞くつもりはなかったんだけど。」 「言いだせる雰囲気じゃなかったゎん。」 私は途端に恥ずかしくなり、顔を真っ赤にして俯く。 「で、でも、私が空さんの立場ならきっと泣いちゃうし、気にする事ないですよ!!」 「そ、そうッス!! 誰だって一人は寂しいんスから、恥ずかしがる事ないッスよ!!」 俯いてるから表情はわからないが、必死にフォローしてくれているのはわかる。それでも私は、顔を上げる事ができなかった。
/363ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加