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「落ち着いた?」
「うん……。」
あれからしばらく泣きじゃくり、千草から離れる。すると無性に恥ずかしくなり、涙を拭いながら俯く。
「ご、ごめんねぇ。安心したら、涙が止まらなくなっちゃってぇ。」
涙を拭い顔を上げると、千草は私と同じ目線になるように屈み、優しい声で話しかけてくる。
「別に構わないわよ。それより、何で泣いてたの?」
私は思わず表情を曇らせてしまうが、目線を逸らさず千草を見る。
「いくら皆に呼びかけても目を覚まさないし、久遠がいなくなったばかりだから、一人ぼっちになっちゃったかと思ってぇ……。」
私が久遠、と言った瞬間、千草はビクッと体を震わせ顔をしかめる。だがそれも一瞬で、すぐに表情を戻す。
「そうだったの。ごめんね、空。不安にさせちゃって。」
千草が心配そうな顔をして私を見てくるが、私は顔を横に振る。
「ううん、千草が悪いわけじゃないからぁ。それよりぃ……。」
「どうしたの?」
前髪の先を指でいじくりながら俯くと、千草は首を傾げる。
「私が大泣きした事、皆には内緒にしてくれないかなぁ? 恥ずかしいからぁ……。」
私が小さく呟くと千草は苦笑いを浮かべ、頬をかいている。
「……空。非常に言いにくいんだけど、皆起きてるわよ?」
「えっ!?」
目を見開き勢いよく振り返ると、皆が気まずそうに立っていた。
「アハハ……。ごめんね、空っち。聞くつもりはなかったんだけど。」
「言いだせる雰囲気じゃなかったゎん。」
私は途端に恥ずかしくなり、顔を真っ赤にして俯く。
「で、でも、私が空さんの立場ならきっと泣いちゃうし、気にする事ないですよ!!」
「そ、そうッス!! 誰だって一人は寂しいんスから、恥ずかしがる事ないッスよ!!」
俯いてるから表情はわからないが、必死にフォローしてくれているのはわかる。それでも私は、顔を上げる事ができなかった。
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