1章 絶望と希望

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「ここに久遠さんが居たら~、なんて言うでしょうね~……。」 儚音の一言が気まずい雰囲気に拍車をかけ、重苦しい空気が漂う。熱も引いたので顔をあげると、皆は泣きそうな顔で俯いている。 皆を元気づけたいけどかける言葉が見つからず、黙り込んでいた。どれぐらい時間が経ったか、千草は勢いよく顔を上げ、笑顔を浮かべる。 「そうだ!! せっかくティルレイの前にいるんだから、ルンルンの家にお邪魔していい?」 「え? うん、ボクは構わないよ。」 突然の提案にルシカさんは目を丸くして驚いていたが、笑顔を浮かべ頷く。 「皆もいいよね?」 「は、はい……。」 千草が嬉しそうな顔をしながら私達の顔を見渡すと、皆は戸惑いながらもシェリルちゃんの言葉に頷く。 「じゃあ行きましょ。」 千草は戸惑う私達を背に、早足で街に向かって歩いていく。 千草に追いつくため走ろうとすると、上空から小さな光がゆっくりと落ちてくる。 私達は不思議に思い光に近づいていくと、光の正体は純白の羽だった。 「これはぁ……?」 私が両手を前にだすと羽は手の平に乗り、それと同時に光が消える。羽をよく見てみると、久遠が神羅鳳翼を使った時に創っていた羽に似ていた。 皆も私と同じ考えなのだろう、羽を見ると驚きを隠せないでいた。 「千草、ちょっと待ってぇ!!」 先をいく千草を呼び止め、風で羽が飛ばさないように手で優しく押さえながら千草の所へ走る。 「なに? ……!?」 私が黙って羽を見せると、千草は体を震わせ羽を凝視したまま固まった。皆も後から追いつき、私達は心配そうに千草を見つめる。 すると千草は震える右手を伸ばし羽に触れようとするが、今にも泣きそうな顔をして途中で右手を戻し私達に背を向ける。 「……行きましょう。」 千草は小さく呟くと、再び街に向かって歩いていく。 「千草ぁ…。」 私はもう一度羽を見た後懐に入れ、皆と一緒に千草の後を追った。
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