1章 絶望と希望

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ティルレイに入っても私達は無言だった。日が高い事もあり、辺りは街の人の声が騒がしかった。 まるで別の空間にいるような錯覚を感じながらも街を歩いていき、ルシカさんの家に到着した。 「どうぞ。」 「お邪魔します……。」 ルシカさんが元気なく呟き玄関を開けると、千草も小さく呟きルシカさんの家に入っていく。 遅れて私達もルシカさんの家に入ると、千草は魔法の修行をしていた時、皆で寝た広間に向かった。 そして広間に着き誰ともなく地面に座るが、そこに会話は無く皆俯いたまま黙っている。 これからどうするか話し合わなければいけないのだが、今は何もする気になれなかった。 皆も同じだろう。虚ろな目をしており、視線をさまよわせている。 いつもなら久遠があれしよう、これしようと提案する所だが、彼は居ない。 先程の羽を見てから久遠が死んでしまったのを実感し、皆どうしていいのかわからなくなっているのだ。 それでも時間は刻一刻と過ぎていき、私達は何もしないまま日が落ちるまでボーっとしていた。 「夕食、作ってくるね。」 私は頷いたが千草達は顔を上げず、ルシカさんは寂しそうに部屋を出て行く。 数十分後にルシカさんが呼びに来たのでリビングに向かい、皆で夕食を食べたが味がしなかった。 それから私達は広間に戻ったが、千草は黙って外に行った。 誰も喋らないまま夜になってしまい、クロウとフィンは別室へ、私達は布団を敷く。 そこで、千草がまだ帰ってきてない事に気がついた。 「ルシカさん。千草がどこにいるか、知りませんかぁ?」 「……わからない。」 生返事をするとルシカさんは布団に入ってしまい、私に背を向ける。 シェリルちゃんや儚音やネイリィも辛そうな顔をしたまま、黙って布団に入ってしまった。 「皆ぁ……。」 私は泣きそうになるのを必死に我慢し、千草を探すため部屋を後にした。
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