42人が本棚に入れています
本棚に追加
「はぁ、はぁ……。千草、どこにいったのぉ?」
私は真っ暗になってしまった街の中を一人、当てもなく走りまわっていた。
この街は広くないからすぐに見つかるだろうと思っていたが、考えが甘かった。
店の前や民家の間の狭い道まで隈なく探したが、一向に見つかる気配がない。
どれぐらい走っただろうか、遂に体力の限界がきて足が止まり、がっくりと肩を落として地面にへたり込んでしまう。
すると一気に不安が押し寄せ、頬に涙が伝ってくる。
「どうしてぇ……? どうしてこんな事になったのぉ……?」
皆の心がバラバラになり、久遠が居なくなり、次は千草まで居なくなった。
地面に両手をつき俯きながら大粒の涙を流していると、懐に入れておいた羽が暖かい光を放っていた。
私は涙を拭い懐から羽を取り出し手の平に乗せると、さっきより光が強くなった気がする。
「久遠……。私達、どうしたらいいのぉ……? ねぇ、教えてよ、久遠……。」
羽に向かって小さく呟くと、羽が淡い光を放ちながら私の目線と同じ所まで浮く。
私は訳が分からず呆然と羽を見ていると、頭に誰かの声が響いてくる。
〔空……空……。〕
その声は昨日まで当たり前のように聞いていて、私が求めている人の声だった。
「久遠……? 久遠なのぉ!?」
夜にもかかわらず大声をだし、辺りを見渡しながら必死に久遠の姿を探す。
しかし辺りは暗闇が支配しており、久遠の姿は見つけられない。
でもさっきの声が気のせいだとは思えず、神経を集中させ羽を見つめてみる。
すると久遠の声が再び聞こえ、私は表情を崩し安堵の息を漏らす。
〔空……。俺の……声が……聞こえる……か……?〕
「うん!! 聞こえるよぉ!!」
私は羽を見つめながら、元気よく頷く。途切れ途切れになっているが、久遠の声を聞いていると何だか元気がでてくる。
そんな私の気持ちとは裏腹に、久遠は悲しそうな声に変え話を続けた。
最初のコメントを投稿しよう!