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愛子は食事の後片付けを済ませると、テレビの前で笑っている母親をリビングに残し、二階の部屋に上がる。
部屋に入りペタリと座り込むと、小さなテーブルの上のノートパソコンを開き電源を入れた。
「来てる来てる」
わくわくしながらメールを開く瞬間。この時だけは、彼女の顔が笑顔になった。
メールの差出人は……女の子。
ネットで知り合ったその子は、都心に近いところでホステスをしているという。
名前は悠里。
それ以外のことは知らない。こちらの顔も明かしていない。ただ、見た目も性格も真逆である悠里に憧れに似た感情を抱いていた。
「元気してるぅ。悠里はこれから仕事だよぉ。週末だし、忙しくなりそぉ。嫌だなぁ。
愛ちゃんは明日お休みだよね? いいなぁ。
じゃあ、仕事行ってくるね。ちなみに今日のファッションはこれ
悠里」
そのメールには、花柄のワンピースを着た悠里の首から下の写真が添付されていた。
「お疲れ様
ワンピースかわいいね。こんなの私には着れないな。相変わらずスタイルいいよね。何を着ても似合っちゃうね。
お仕事頑張って。あまり飲みすぎちゃダメだよ 愛子」
愛子はパソコンを閉じると、通販のカタログを開いた。悠里の着ていたワンピースと似ているものを見つけて、少し考える。
「やっぱ、私には無理」
そう呟くと、カタログを閉じた。
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