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「ママ、あのね……」
悠里は閉店後二人きりになった店のカウンターに座り、ママの背中に向かって話し始めた。
ママは棚の上の酒のボトルを整理しながら、悠里の話に耳を傾けた。
「私、どうしたらいいかわからないの。こんな気持ちになるなんて、思ってもみなかったわ」
「やきもち……か」
ママは振り返りながら呟いた。
「やっぱりそうなのかなあ」
悠里は、きれいに並べられた洋酒の瓶を眺めると、溜め息をついた。
「何があったかは知らないけど、そんなに悩むんなら別れちゃいなよ」
別れという言葉に、悠里は過敏に反応した。
「嫌よ。絶対に別れない」
「そうなの。だったら頑張りなさい。恋愛には少なからず悩みは付き物なのよ」
ママは諭すように話す。
「わかってるつもりなんだけどねえ」
悠里の煮え切らない態度を見かねたのか、ママは言った。
「明日休んでいいから、彼女と話し合ってきなさい」
「え? でも……」
「いいのよ。明日は月曜だから、どうせ暇なんだし」
悠里は、少し考えて答えた。
「わかった。ありがとね、ママ」
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