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そして、飲み物や料理がテーブルに並び始めた頃、愛子の口から平井の話が出る。
「……でさー、彼氏ができたんじゃないかってからかうのよ。ほんと困っちゃうよね」
その言葉を聞いた悠里の顔が曇った。
「……ねえ。なんで困るの? んで、その平井って人、何? なんでその人の話を楽しそうにするの?」
もう、悠里の瞳には笑みが一欠片も無かった。少し涙の浮かんだその瞳は、じっと愛子を見据えていた。
「……え? なによ急に」
悠里の突然の変わりように驚き、どうしていいかわからない様子の愛子。悠里と目線を合わせることができない。
それでも、愛子を見つめたままの悠里。
「答えてよ!」
隣のテーブルのサラリーマンが驚いて見るが、二人の様子を見て目を逸らす。無理もない。内容は恋人の喧嘩なのに、そこにいるのは女性が二人なのだから。
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