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「それに、何?」
悠里は愛子の顔をのぞきこんで訊く。
それでも愛子は顔をあげず、少し肩を震わせた。
「いいのよ、何でも言って」
悠里はさっきまでの勢いを消し、穏やかに話しかける。
その言葉で意を決したように、愛子は口を開いた。
「私ね、悠のことを男として好きかわからないの。ううん、男として見られない。だから……」
再び言いかけた。
「ごめんね。私がこんなだから」
悠里はそれ以上は訊かず、静かに酒を飲み始めた。
二人とも、お互いが抱える悩みを露呈し合ったわけだが、それをどうすればいいのか、今後どうしたいのか、考えることができなかった。
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