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「ありがとうございました。また来てね」
悠里はいつものように最後の客を見送ると、外の看板を消し店に戻る。
店内では数人のオカマたちが後片付けをしている。
ママはいつものようにカウンターの中を片付けている。
「悠里、あとでちょっといい?」
カウンターの前のテーブルを拭いていた悠里は振り返った。
「うん、いいよ」
再び二人はそれぞれの仕事をこなした。
みんなが帰って薄暗くなったカウンター。
悠里とママは隣り合う形で座っていた。
「別れたのね」
ママは酔いざましのお茶を飲みながら話を始める。
「うん。やっぱわかる?」
「あんたとは長い付き合いだからねえ」
ママは少し微笑んだ。
「私、これからは仕事に生きるから」
悠里は少し顔を上げて誓いを立てるように言った。
「それはうれしいね。でも、そんなに頑張らなくてもいいのよ。息切れしちゃうから」
心配そうに悠里の顔を覗き込むママ。
「大丈夫よ。こう見えても強いんだから」
悠里は笑顔だった。
その胸の中のわだかまりを隠すように……。
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