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そして、次の日曜日。
平井に誘われた愛子は、駅から待ち合わせの喫茶店に向かって、人通りの多い街を歩いていた。
「あっ、もう来てるじゃん」
喫茶店に着くと、目の前の小窓の中に彼を見つけ、慌てて駆け出した。
「遅くなってごめんなさい」
弾んだ息を整えながら、平井の向かいに座る。なんとなく、木の椅子は座り心地が悪かった。
「全然いいよ。俺も今来たとこだから」
愛子はちらりと平井の飲みかけのコーヒーカップを覗く。半分以上減っていた。
「コーヒーを」
愛子がウェイトレスに注文すると、平井はその女の顔をちらっと見た。
たったそれだけのこと。
なのに、愛子の表情は一気に曇った。
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