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「泥棒だー!!」
薄暗い闇に包まれた狭い道に、中年男のムサい声が響き渡る。あらら、案外速く見つかっちゃったか……
「逃がすな、追え!!」
まるでどこぞの組織を思わせるような人間達。映画から抜け出したかのようなシチュエーションで、靴音荒く追いかけてくる。
ふと自分の手元に目を落とすと、手にぴったりはまってしまうような小さな箱が目に映った。
中には、車どころか家くらいな買えそうなほどの金額で取引されている、指輪が入っている。
勿論、僕の物ではない。これ1つで、数年は軽く生きられそうだな……なんて他愛の無い事を考えながら夜道を走る。
複雑な道を突き進み、何回かの曲がり角を曲がる。結構な距離を走ったけど、そろそろいいかな……?
立ち止まって耳を澄ましてみるけれど、何人もの靴音は遥か遠くから微かにしか聞こえない。
「……うん、上手く逃げられたみたいだ。」
念のため箱を開けてみると、美しく輝く指輪が存在感を強く放っていた。偽物……の可能性は無いだろうな。
「よっし、依頼達成っと。」
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