償い

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 篠崎はゆずるに高校に行くように言ったが、ゆずるはそれを嫌がった。怖かったのだ、またいじめられるのが。 「行きたくなければ行かなくていい。勉強は家でもできるしな。」  学校へ行かなければいじめられることもないが、友達もなかなかできない。ゆずるはいつまでも友達ができないままかもしれない。それでも篠崎は、ゆずるを悲しませたくなかった。自分が、ゆずるの友達百人分になろう、と彼は思った。もうゆずるが泣くのは見たくなかった。  もうゆずるは社会に出ることができないかもしれない。外に出るのも嫌がる程、ゆずるは傷付いていた。学校で彼を守ってやれなかった自分の責任だと、篠崎は思っていた。ゆずるが自立できるまで、もしかしたら一生かもしれないが、ゆずるを守ってやろう。それが償いになるのなら。
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