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「文美っ」
私の態度に隣の理恵が小突きながら注意してくる。
そんなことを言われても今の事があって私も気分が良くない。
場の空気を崩しているのは分かるが、愛想を振るようなことなんてできないし、したくもなかった。
「まぁ、いいじゃん。俺らも悪ふざけしちゃったんだし。ごめん、俺も悪かったよ」
目の前の男が軽く両手を合わせながら謝ってきた。
さっきの茶化した感じではなく真剣に。
私は久しぶりに鼓動の高鳴りを感じてしまった。
単純なのかもしれない……
ただ最近、同年代の男の人にこんな風に真面目に謝られた事がなかっただけなのに。
彼氏と別れる時も最後は開き直られて喧嘩別れ。
浮気したのもアイツで。
私は何も悪くないのに後味の悪い別れ方をしてしまった。
「ううん。私も悪かったと思うし……ごめんなさい」
いつもは意地を張りがちな私も素直に謝ることができた。
何となくお互い照れ臭なり、誤魔化すように笑い合ってしまった。
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