桜の木の下で――

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いつも昼過ぎに決まって、街を完全に見下ろせる、花見の絶好のポジションでベンチに座って絵を描く女性。歳は20前半だろうか?格好は至ってラフ。濃いブルーのジーンズに白いシャツ。長い髪を後ろで束ねただけ。オレの周りにいる女子連中の化粧顔に見慣れていたオレには、彼女が清々しく爽やかに見えた。 僕はそのベンチの裏、少し離れた桜の木の下が定位置。其処に座って呆けた時間を過ごすのが日課だ。そして、あの女性を見つめるのもまた――日課だ。 いつも穏やかな表情で、街と向き合って絵を描く女性。オレは一目で惹かれたんだ。 でも――。
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