51016人が本棚に入れています
本棚に追加
/317ページ
静まり返った更衣室。
口を閉ざした男女2人。
あたしは智宏を目の前に、時間が止まったみたいに固まっていた。
動かない体とは裏腹に、心臓は早鐘を打つ。
"体からその音が漏れているんじゃないか……"
って、無駄な心配をしてしまうくらい、あたしの内で大騒ぎしていた。
「…………」
気まず過ぎて声が出ない。
智宏はそんなあたしを無言のまま見つめながら、腕を組んで立っているだけ。
(謝らなきゃ……)
そう思うのに、喉が詰まって言葉が出てこない。
このままはイヤなのに……。
ちゃんと、素直に謝りたいのに……。
言うこときかない自分の体と、
いさぎ悪い自分。
その2つが相まってヤキモキした気持ちが生まれて、あたしは唇を噛み締めた。
「あき……」
そうしている内に、沈黙を破った低い声に、あたしはビクッと肩を竦ませた。
最初のコメントを投稿しよう!