第5話

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戸惑いを隠せなくて、 でも、この状況をうまく飲み込めなくて……、 あたしはそのまま智宏の腕の中でじっとしているしかなかった。 あたしを包む大きな腕は 柔らかくて、 優しくて、 でも力強くて、 なんて表わしたらいいんだろう? …………抱擁? 緊張を隠すようにそんな事考えていたら、耳のすぐ近くで甘いため息が聞こえて、あたしの体をくすぐった。 「……来るなって言ったのに……」 その言葉に、あたしはまたビクッと体を強ばらせた。 この状況はよくわからないけど、あたしが約束を破った事には変わり無い……。 「…ごめんなさい……。約束破って……」 蚊の鳴くような声で再度謝ったら、抱き締めている腕に少し力が入った気がした。 でも、痛いとかはなくて……、 まるで、壊れ物にでも触れるような、くすぐったい感覚で……。 あたしの体の中がくすぐったくなったような、そんな変な感覚が駆け巡った。
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