第6話

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けど、そんな時間は長くは続かなくて、元気な声が沈黙を切り裂いた。 「はじめましてっ!ウチはあきの友達の香奈っていいま~す!早生まれなんで、まだ16歳でーすっ!」 オレンジ色の髪を風でなびかせて、いらない情報を交えながら太陽みたいに眩しい笑顔を向ける"香奈"。 「わたしは青柳ゆうかです。いつもあきちゃんがお世話になってます」 香奈とはうって変わり、落ち着いていて、おしとやかな顔立ちで優しく微笑みながら挨拶を済ませる"ゆうか"。 ――はい。 二人はあたしの友達です。 おまけに同じ高校です。 「こんにちは~! あきのお世話してます、秦野智宏です」 いつもの調子で軽い挨拶を交わす智宏。 この人は人見知りもしないし、ノリがいいから、老若男女に全対応出来る……。 楽しそうに自己紹介をする3人を見ていると、何だかどっと疲れてしまう……。 「てか、二人とも何で制服なの?」 初見から気になっていた事を訪ねると、さっきまでの笑顔が消えた。 「てか、今日が何の日か忘れてるでしょっ!」 香奈が鼻息荒くしながら詰め寄ってきて、あたしは記憶をフル回転させる。 それと同時に、さっき制服を見て感じた不安がより一層大きくなった。 しかも、その答えを記憶がリンクさせてしまった……。 「………登校日だ」 毎日の様にバイトに明け暮れていてすっかり忘れていた。 「あきちゃんったら、学校来ないんだもの。先生も心配してたわよ?」 ゆうかも溜息混じりで呆れたような笑みを浮かべている。 ぎゃあぎゃあ言われない分、言葉の重みがずっしりとしている……。 「……忘れてました」 あたしが俯いてそう言うと、2人は「やっぱり……」と、声を揃えた。 そんなあたしたちのやりとりを見て何を思ったのか、 突然智宏が大笑いしはじめた。
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