11人が本棚に入れています
本棚に追加
外に出たはずだった。
おかしい。
ここは?
明るい所にでたはずなのに、暗い。
寒気。
悪寒。
たちつくすボク。
サーカスの団員いないのだろうか?
なにも見えない闇。
後ろを振り返ってもなにもなかった。
本当になにもなかった。
…さっき通ったはずの通路まで。
不意に、人の気配を感じた。
そして、足音。
コツ。
…コツコツ。
どこから音が出ているのかも、わからない。
いきなりだった。ぬっと出てきた白い…いや、手袋をはめた手。
その手は、ボクの肩をつかむ。
男の手だろうか、大きめの手だった。
「貴方は此処で何をしておられるのですか?」
とても大人びた、低く、丁寧な言葉。
振り返り、相手を見る。
ボクと目を合わせるとにっこりと笑ったが、なぜか、寒気がした。
「ボクは…」
言葉が続かない。
「どうなされました?お体の具合が悪いのでしょうか」
「…いえ……」
冷や汗がだらだらながれる。
空気が重く、脳の中で危険信号が鳴っている。
今すぐに逃げ出したい!
けれど、足が震えて動かない。
「…あぁ。貴方はサーカスを御覧になるために来られたのですね?それでしたら、ここは、貴方が御覧になる所ではありませんよ。」
優しく、声をかけられているようだけど、奥の方から沸き上がる恐怖。
なにも返せない。
「こちらから出られます。…どうぞ」
明るい場所へ出た。
どっと溢れる汗。
心臓がばくばく鳴っていた。
後ろを振り返っても、彼はもういなかった。
最初のコメントを投稿しよう!