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もちろん、用意が良いね、二人分の箸があるなんて、みたいな無粋なことは言わない。そこまで朴念仁じゃないのだ、僕は。同様に、ダイエットする人が食べる量じゃないとも言わない。
もしそんなこと言ったら、優衣ちゃんむきになって一人で全部食べちゃうと思うし。
「ねぇ、食べないの……? おいしくなさそう?」
「ううん、おいしそうだよ! じゃ、いただきます」
僕はまずミニハンバーグに箸を伸ばした。一口サイズより若干大きいそれを、僕は一口で食べる。優衣ちゃんは僕の反応を待って固唾を呑んでじっと僕を見つめていた、身じろぎ一つしないで。
膝のところでぎゅうっと握りこぶしを作っているのがいじらしかった。
ゆっくりと味わい、僕は嚥下する。
僕ののどの動きで判断したのか、
「どう? おいしい?」
身を乗り出して尋ねてきた、それこそキスが出来るくらいまでに。もちろん、しないけれどもドキッとしたのは言うまでもないことだ。
優衣ちゃん。
普段は攻撃的で見栄っ張りで、だけれども時折すごく優しい優衣ちゃん。
そんな魅力的な幼馴染とずっと仲良くしていきたい、と僕は心の底から思う。
さーて、あったり前じゃないの! そんなこと、と照れ隠し混じりに言葉を返してきそうだな、と予想しつつ僕は、
「すっごくおいしいよ! ありがとね、優衣ちゃん」
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