僕の幼馴染

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 僕の持論としては、授業なんて教師の目を盗んで居眠りしてなんぼだと思っているのだけれども。残念なことに、世界はそれを認めてはくれないのだ。生きづらい世の中である。  ひゅーひゅーと音の鳴らない口笛を吹く、という古典的(漫画的)手法でごまかしながら、弁当を取り出すために、机の横にひっかけてあるスクールバッグを漁る。 「さーて、おべんとっ、おべんと」わざとらしいにもほどがあるかな。  優衣ちゃんはと言えば、なんだか授業の大切さについて語っていた。だけど、哀しいかな、聴衆は存在しない。僕たち二人を除くクラスメートは三々五々に昼食に舌鼓を打っていた。 「んん?」  あるはずのモノの手触りを得られず、僕はバッグを机の上に置いて弁当箱を探す。 「なっ、ない……」  そんなバカな……ッ!  おべんと……忘れちゃった。かるく、泣きそうになった。  なんとなれば、僕は朝はいつまでも羽毛布団のぬくもりから抜け出ることができず、最終的には時間ぎりぎりまで布団にくるまっており、その結果、毎日遅刻寸前に学校に飛び込むのだ。  当然、朝食を食べる暇なんかないのである。二食抜きはちと厳しい。  ちなみに、優衣ちゃんは僕を置いて、先に学校に行く。なんて薄情な幼馴染なんだろう。
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