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これは優衣ちゃんがちょっと不安になってる時の癖なのだ。だから、僕が言うべきことは、
「うんっ、ありがとねっ、優衣ちゃん! 喜んで食べさせてもらうよ」
喜色を露わにそう言うと、優衣ちゃんはゆるゆると口元を綻ばせにへらっとした顔になり、すぐにはっとして無表情を装って、壁から僕に視線を移動した。
かわいらしい僕の幼馴染が無表情だと思っているそれは、どう見ても虫歯痛をこらえたもののような、あるいはくしゃみが出そうで出ない時のようなものである。
まぁ、ようするにばればれなのだ、いろいろと。
きっと、僕は弁当を忘れたんじゃないのだ。いつもテーブルに載ってたはずのそれはなく、ゆえに僕はバッグに入れたのだと判断しただけなのだ。もとからなかったのに。
視界の端にとらえられた台所の状況。いつもよりたくさんあったフライパンとか鍋とかボウルとかの、調理に必要な道具。なんだかにやにや笑いをしていた母親殿。
こらえきれず吹き出してしまった。それを見咎めて優衣ちゃんは僕を睨んできた。
怖くはない。逆に微笑ましいくらい。
けれども、優衣ちゃんは特に言及はせず、ふんっ、と鼻を鳴らして、
「天気が良いから、屋上に行くわよ」
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