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屋上に出ると、先客がちらほらといた。僕と優衣ちゃんとは端っこのフェンスの方まで進む。上部の鉄線のトゲトゲが見てるだけで痛かった。
唯一誰も使っていなかったペンキの剥げたぼろっちぃ木製ベンチに並んで腰をかけ、僕は間に弁当箱を置いた。蓋をとるのは優衣ちゃんに譲る。
僕がそのつもりでいたのを知ってか知らずか、たぶん後者なのはさておいて、優衣ちゃんは尻尾を生き物のようにゆらしながら、「じゃじゃーん」と言いながらふたを開けた。
「うわぁ、おいしそう……!」
弁当には彩り豊かのおかずが、おそらく栄養バランスや見た目にも留意して並んでいた。薄情だと思って後悔してる。
でも……、これだけのモノをつくるのに、一体どれだけの時間がかかったんだろう? 僕が寝てる間に……いや、僕がいつまでもグータラに寝てるからこそ、気兼ねなく出来たんだろうけど。
……何で家でわざわざやったんだろうと考え、すぐに優衣ちゃんのお母さんを思い出した。……おばさん、自分以外には絶対に台所を使わせない人だからなぁ。
「はいこれ、はし」と、僕がいつも使っている箸を差し出してきた。
「あ、ありがとう、優衣ちゃん」僕はお礼を言いながらそれを受け取る。
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