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「来たぞ……若林」
「マジかよ」
後ろを向いてそう呟いた春日の言うとおり後ろを向けば、まだ多少の距離はあるにしても俺達を見つけ全速力でこっちへ向かってくる二体のハンターが居た。
「速いな……」
「感心してんじゃねえ! 逃げる事に集中しろおぉぉぉぉぉ!!」
しかし、少しずつではあるが、確実に俺達とハンター達との距離は縮まっている。一刻も早く逃げ道を見つけないとっ……!
しかし、そう考えたのもつかの間、
「おい、嘘だろ……!」
目の前からも、多少の距離を置いてだが一体のハンターが俺達を見つけこちらへ迫ってくる。
前も後ろもハンター。残る逃げ道は、左右に延びた通路。
俺は距離的に右側の通路に近い方を走っていたので、反射的に右側の通路へと曲がってしまった。
しかし、春日は左側の通路に近い方を走っていたので左側の通路へ曲がってしまう。
「しまっ……春日!!」
「~! 若林!!」
春日の方へ視線を向けるため後ろを振り返ったその時、俺達を後ろから追って来ていたハンターが曲がり角から姿を現した。
正直心臓が止まったかと思ったが、俺は地面を力一杯蹴り全速力でハンターから逃げた。
今はこのハンターから逃げる事が先だった。捕まってしまってはどうにもならないっ!
それからいくつの道を曲がったのかは覚えていないが、俺は確かに目の前に非常用階段と書かれた扉を見つけた。
最後の力を振り絞って両足に力をこめる。
扉まであと三メートル
二メートル
一メートル
俺は扉まで辿り着くと扉を急いで引いて中へ入り、鍵を掛ける。
その瞬間に分厚い金属の扉がハンターの体当たりかなにかで、どでかい衝撃音と共に大きくへこんだ。
「うっわあ~、こえぇ」
そのとんでもない力と追われていた時の恐怖を思い出し、俺は身震いした。
俺を追ってきたハンターは二、三度体当たりをして扉が開かない事が分かったのか、どこかへ去ってしまったようだ。
「はあ~、やっと行った。なぁ、かす……がって、居ねえんだった」
無意識に出てしまったその名前と、無意識に向いてしまった左隣。そこに相方は居ない。
あいつ……
「上手く逃げ切れたかなぁ」
階段に座り込み乱れた息を整えると同時に、込み上げてくる孤独感。
春日、頼む。無事でいてくれ……っ。春日っ!
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