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薄暗い洞窟、それが俺達に与えられたステージだった。
「ちゃんとついて来てるか、川島?」
そう声を出して後ろを向けば、
「うん、大丈夫」
足元に注意を払いながらも俺のほうに顔を向けて微笑む相方の姿。
地面には大小様々な石が転がっていて地味に歩きにくくなっている、まぁまぁ体力のある俺はまだ良いが、馬鹿で鈍くさい相方は先を行く俺にちゃんとついて来てくれているか心配だった。
いつもの事だけど、これじゃあどっちが年上かわかんないな。
「うわっ!」
相方が大丈夫と微笑んでから数十秒も経たないうちに、後ろから聞こえた小さな声。
振り向くと随分派手に転んだと見られる、地面に突っ伏した川島の姿。
さっき大丈夫って言ったのに、すぐこれだし。
「おい、なにやってんだしマジで」
「ご、ごめん、つい……」
いやいや、ついの使い方間違っとるし。つい転んじゃったって何だし。
「ケガは大丈夫か?」
「う、うん平気。ちょっと擦りむいたくらいだから」
そう言うと川島は笑いながら、右腕の肘部分を左手で隠した。
バカ、ばればれだし。
「川島、ちょっと見せろ」
「え、あっ……!」
俺が右腕を引っ張ると押さえられていた左手がスルリとほどける。そこから覗いたのは、
「お前、結構血出てるじゃねえかよ……!!」
真っ赤な血がポタポタと流れ出る肘。
きっとやけに尖った岩かガラスかなにかがあったのだろう、擦りむいたなんてものじゃなかった。
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