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「か、金田」
「ちょっと待ってろ」
なにか言おうとした川島の口を塞ぐように俺は言葉を発して、自分のズボンのポケットに手を入れる。
「あった」
軽い潔癖症である俺には必需品のハンカチ。正直なところ頭の中であるこの場所にまであるか不安だったけど……。
そのハンカチを半ば強制的に、川島の肘の傷口部分に当ててきつく縛った。
「よし、こんなもんだろ。痛くないか?」
「……うん。ありがと、金田」
川島のその表情はいつもの、温かくて喜びでいっぱいなものじゃなかった。俯いていてよく分からないけど、どこか自分を責めるような……。
「ごめん、本当……」
そう言うとさらに顔を俯かせる川島。
ごめんって、それは……。
「ケガを隠そうとした事、謝ってんのか?」
「えっ? いや、そっちじゃなくて。ケガしちゃってごめんって……事」
「っんだよ、そっちかよぉ!!」
「うえぇっ!? 何!?」
いきなり俺が大声を出したからビビッたのだろう。川島は顔を上げ目を丸くしている。
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