はんにゃ編①

3/7
前へ
/216ページ
次へ
「か、金田」 「ちょっと待ってろ」 なにか言おうとした川島の口を塞ぐように俺は言葉を発して、自分のズボンのポケットに手を入れる。 「あった」 軽い潔癖症である俺には必需品のハンカチ。正直なところ頭の中であるこの場所にまであるか不安だったけど……。 そのハンカチを半ば強制的に、川島の肘の傷口部分に当ててきつく縛った。 「よし、こんなもんだろ。痛くないか?」 「……うん。ありがと、金田」 川島のその表情はいつもの、温かくて喜びでいっぱいなものじゃなかった。俯いていてよく分からないけど、どこか自分を責めるような……。 「ごめん、本当……」 そう言うとさらに顔を俯かせる川島。 ごめんって、それは……。 「ケガを隠そうとした事、謝ってんのか?」 「えっ? いや、そっちじゃなくて。ケガしちゃってごめんって……事」 「っんだよ、そっちかよぉ!!」 「うえぇっ!? 何!?」 いきなり俺が大声を出したからビビッたのだろう。川島は顔を上げ目を丸くしている。
/216ページ

最初のコメントを投稿しよう!

371人が本棚に入れています
本棚に追加