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「……かわ、しま?」
居なかった。
たった今後ろで声を上げたはずの相方が、ついさっきまですぐ近くに立っていたはずの相方が、居なかった。
「かわ、しま。おい!どこだかわしまあぁぁ!!」
さっきまで川島が立っていたであろう場所で叫ぶ。
しかし返って来るのは洞窟の中に響く自分の声だけ。
地面に手を付いて調べてみたが、なんてことはない普通の地面。俺の両脇に存在する壁も同様だ。
「なん、で……川島。悪い冗談やめろよ、かわしまあああぁぁぁぁ!!」
叫んでも叫んでも、返事が返って来る事はない。
「……!」
その時僅かな音だけど、遠い後ろからジャリッと、小石を踏む音がした。
「かわし、……!!」
振り返った瞬間、俺の体は凍ったかのように硬くなり、全身に寒気が走った。
振り向いた先に居たのは望んでいた相方じゃなく、もっとも遭遇したくない人物、
ハンター
気付くと考えるよりも先に体が動いていた。
とにかく走って、走って。ハンターを撒く事だけに集中する。
しかしこの洞窟は今のところずっと一本道で、後ろからハンターに追われると前にしか進めない。
「どうしろってんだよ!」
石が散らばっていて走りにくい地面は確実に俺の体力を奪っていく。少しでも集中を解いたら転びそうなほどだ。
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