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そうして俺達は仲見世通りを探索する事にした。
人が一人も居ないのに両脇にずらっと立ち並ぶお店は全て普段と変わらず開いていて、それがやけに気味悪かった。
「ヒントも無しに活気探せなんて無茶な話ですよね、ンジョボネくん」
「活気じゃなくて鍵ですよ。確かにいつもと違って活気が無いですけど。…………とゆうか土屋です土屋! ンジョボネってどこの国の名前ですか!?」
まぁ、毎度毎度よくこうもボケを一つ残らず拾えるな。正直相方なのに感心するよ。本当に、うん。俺はそのツッコミに惹かれて、お前をお笑いに誘ったんだから。
そう、俺が、誘ったんだ。
「…………塙さん」
「なに?」
そう言って左を歩く土屋を見ると、すこし難しい表情をしていた。
あ、さすがにボケしつこいか。
ボケるのやめてください、いちいちツッコミ入れるの面倒です。くらいの事言われるだろうなと予想していた俺の耳に届いたのは、とても意外な言葉だった。
「なんか不安なんですか?」
「……は?」
あまりに意外すぎたので自然と足が止まってしまった。そんな俺に合わせて土屋の足も止まる。
不安?
「不安って……それは、まあ、ちゃんと楽器見つけて帰れるのかって不安はあるけど」
「だから鍵ですって、楽器見つけてどうするんですか。演奏会でもする気か! ってそうじゃなくて!!」
いつも穏やかな声が、少し荒いものに変わった。それと同時に俺の胸に、少しの胸騒ぎが起こる。
「なにか、不安とゆうか心配とゆうか。そうゆうの、してませんか? 僕、に」
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