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誰も居ない渋谷センター街。
俺達はそこを全力で走っていた。
「池田! もっと早く走れねぇのかよ!!」
「これが全力なんだよ! しょうがないだろ!!」
しょうがないって、だからハンターに捕まったらそんな事言ってらんないって言っただろうが。
実際今俺達、特に池田はハンターに捕まるかもしれない危機に陥っていた。
もう後ろを走る池田と俺達を追うハンターとの距離は、10メートルもなかった。とんでもないスピードを持ったハンターが相手ではこれ程の距離はすぐ縮められてしまうだろう。
「池田! そこ右曲がるぞ!!」
「お、おう!」
俺が指差したのは人が一人ギリギリ通れそうなくらいの細い道。
普段なら絶対誰も通らないだろうけど。
そこを曲がって目に入ったのは、道の左端に高く積み上げられた、空き瓶を入れるためのプラスチックの箱。
「池田、先に行け!」
「わ、分かった」
積み上げられた箱の脇を通り抜け後ろを走っていた池田を先に行かせる。
ハンターと俺との距離は、もう3メートルもないくらいに縮まっていた。
「これでどうだ!!」
ハンターが目の前ギリギリまで迫って来た瞬間を狙って、俺は脇に積み上げられた箱の一番下を力一杯蹴りとばした。
とんでもなくやかましい音と共に崩れる大量の箱。それは上手い具合に俺達とハンターとの間にちょうど良い壁を作ってくれた。
「今のうちだ、行くぞ!」
「おぉ、さっすが村ちゃん!!」
隣で俺に尊敬に似た感情を宿した目を向けている相方を軽く無視して、俺はとにかくハンターから逃げるため走った。
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