371人が本棚に入れています
本棚に追加
「うへぇ~、疲れたぁ」
そう言葉を吐いて右隣にドサッと座り込む池田。
もうハンターから十分離れたので俺達は走るのをやめ休憩をとっていた。
本当は一秒でも早く、地図が示す赤い点の場所に行きたい所だ。しかし疲れ切っている今ハンターに遭遇したら今度こそどうしようもなくなるので、人目に付き憎そうな路地裏でひとまずは体力回復を待った。
「あっ……村ちゃん俺、分かったかも」
なんの前触れもなく発せられた意味不明な言葉。分かったって、
「なに、分かったって?」
そう言って池田に目を向ける。
すると池田の両手にはあの機械が握られていた。
「無限大ホールだよ、ここ」
指差したのはあの赤い点だった。
無限大ホール、俺達にとって一番馴染み深い劇場だ。
「あぁ~確かに言われてみれば」
まぁ場所が分かったからってどうなるってわけでもないけどな……。
「……今じゃあ、半年前に比べてまるっきり無限大ホールに出る回数少なくなったよな」
さっきまでの明るい声色とは違う、少しの寂しさを含ませた声で池田が呟く。
確かにちょっと前までは、毎週必ず一度はそこでネタを披露していた。
新ネタを下ろす場所は必ずそこだった。
今のように他事務所の人達や大先輩と絡むのも良い経験だけど、やっぱり同じ事務所の芸歴が近い者同士のライブは、やっていてとても居心地が良くて……。
最初のコメントを投稿しよう!