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「今に不満持ってるわけじゃないけど、楽しかったよなぁ」
そう言って俺を見る池田。
俺も、同じ気持ちだった。できる事ならもう一度だけ、あの頃に戻ってみたいとさえ思う。でも、
「そんな感傷に浸る前に、今は鍵見つけて生き残る事が先だろ」
俺はある程度回復した体に力を入れて立ち上がる。
まずはここから脱出しなければ、楽しかったもなにもあったもんじゃない。
「はいはい、村ちゃんマジメだな~」
マジメって……こんな命がかかったゲームの中で未だ脳天気なお前のほうがおかしいだろ、と声をあげて言いたくなったがそこはグッと堪える事にした。
でもその代わり、
「池田はさ、なんでこんな状況なのにいつも通りでいられるわけ?」
疑問をぶつけた。
正確に言えば、疑問に似せた嫌味、だけど。
俺の隣で今立ち上がったばかりの池田はただでさえでかい黒目をさらに大きくしていて。
「なんでって……そんなの自分にも分かんな、」
「もしかしたら死ぬかもしれないのに、なんでそんないつも通りでいられんだよ!」
自分らしくない、怒りに任せた叫びだった。
何に怒ってるって、もちろん、池田に対して……。
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