古傷

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「で、ピアス。」 おもむろに慧は耳からピアスを外すと、それに消毒液をかけて僕の耳に通した。 「え、これ…」 「なんかいれないと塞がっちゃうだろ?今これくらいしかピアス持ってねぇし」 「あ……」 正直、勢いでここまできたのであけた後のことを何も考えてなかった。 「そっか…ごめんね。新しいの買ったら返すから」 「あー。いいよ、やる。」 「え、でも…」 「もう一個あるからさ。」 慧は立ち上がって、棚に入っていた箱を持ち出すとまた隣に座った。 「ほら、な。」 箱をあけると、もうひとつ同じピアス。 それを自分の耳に通し、僕に見せつけるように髪を耳にかけた。 「お揃い。」 そう言って笑う慧が可愛く見えて、僕も自然と笑顔になる。 「じゃあ、遠慮なく…いただきます。」 「はい、どうぞ。」 なぜかふたりで頭を下げ合って、目が合うとクスクスと笑った。
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