七夕

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今でも眼に焼きつくのは、赤い飛沫。 太陽に反射してキラキラしていて、蒼に赤が映えて綺麗だなんて思っている場合ではないのに、頭の隅で己を非難する声が聞こえた気がする。 苦痛に歪む顔、珍しく乱れている息遣いに知らず跳ねた心臓がうるさい。 「片倉殿、政宗殿の容態は」 政宗の私室の襖が開けられ、現れた小十郎が額に浮かぶ汗を拭った。 「今落ち着かれた。傷の具合も悪くない」 「良かった…」 無意識のうちにぎゅっと握っていた拳を解く。ホッと息をつくと、襖の向こうにいつものようににやりと笑う政宗がいた。 「Hey、ボサっと座ってるなよ、幸村」 come onと小さく言われ、人差し指をちょいちょいと動かす。それは己を呼ぶときの政宗の癖で、何も知らなければ傷を負っているだなんて気づかないくらい、政宗は普段と同じだった。 「政宗様、何かあればすぐにお呼び下され」 「OK」 政宗がそういうと、小十郎は静かに襖を閉じて部屋を後にした。 「政宗殿、」 「幸村、そこの襖開けてくれ」 部屋に2人きりで、傷の具合を聞こうと口を開いたのに、それは己の名前を呼ぶ声と重なった。
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