七夕

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言われるままに小十郎が出て行った方とは違う、襖を開く。そこは縁側に繋がる襖で、開くと外にはもう闇が広がっていた。閉め切っていた部屋に風が通って、うっすらと夏の匂いがした。 「政宗殿、あまり無理はしないで下され」 「ha、あんたには言われたくない台詞だな」 くるりと向きを変えると、布団の上に座る政宗と眼があった。にやりと上がる口角はいつでも楽しそうで、彼には適わないと思い知らされる。 「某、心配でたまらないでござる」 「Ah?誰が誰を心配するって?」 「某が、政宗殿を、でござる」 ぷいっと横を向いて、何を言っても聞いてくれない愛する人に背を向ける。そのままそこに座りこんで空を見上げると、濃紺の中に月だけが明るく輝いているように見えた。 「sorry、悪かったな」 「政宗殿!動いては…!!」 衣の擦れる音に背けた顔を戻すと、少し離れて座っていた彼がすぐ傍に来ていた。一瞬だけ歪んだ顔に、思わず大きな声を出すと怒られてしまった。肩に僅かな重みが加えられ、隣に腰を下ろした彼の頭が乗せられたことに気づく。 「政宗殿……?」 珍しく甘えてくる彼に不思議に思うも、口角が上がってしまう。
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