162人が本棚に入れています
本棚に追加
「中々会えないのは、某たちと同じでござるな」
「よく言うぜ。戦がなければしょっちゅう奥州に来るくせに」
「む、それでも某は毎日政宗殿にお会いしたい」
クックと咽の奥で笑われる。いつもなら文句の一つでも言うけれど、今日は何だか彼が楽しそうで言葉を飲み込んだ。
「笹の葉と短冊を用意すればよかったな」
「政宗殿が短冊に何て書かれるのか気になります」
「ah?そういうあんたこそ、何て書くんだ?」
「そうでござるな、某なら…政宗殿が無茶をしないように書くでござる」
頭に浮かんだのは昼に見た血の赤と倒れる彼の姿で、できればもう見たくはないと願ってしまう。
「そいつぁ、願うまでもないんじゃないのか?」
「?」
「あんたが傍にいて、俺を見てればいいだろ?」
どうして彼は、挑発するように笑うのだろうか。血の匂いを纏わせているくせに、この後傷が開いて文句を言われても、それは彼のせいだと胸を張って言えるだろう。
最初のコメントを投稿しよう!