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「政宗様」
小十郎の眉間には深く皺が刻まれ、薄っすらと殺気が洩れている。
「小十郎、お前は下がれ」
「……御意」
しばらく逡巡した後、小十郎は深く頭を下げて静かに部屋を出た。
「政宗殿ぉぉぉおおおおおお!!!!!」
うるさく響く、奴の声。もう迷うこともないのか、俺の城だというのにその足取りはまっすぐこの部屋に向かっていた。
「政宗殿っ!!!」
うるさい足音が止んだかと思うと、両手で左右に襖を開き、両腕をいっぱいに広げた状態の真田幸村が立っていた。
「Shut up! 何時だと思ってるんだ」
「ぅ、申し訳ない……」
一応今が夜だということはわかっているのか、しょぼんと気まずそうに下を向く。
「寒い、早く閉めろ」
5月だと言っても、この地方は陽が落ちてしまえば寒い。襖を開けっ放しにされるだけでも部屋の温度はどんどん下がっていく。それに、しょぼくれたまま突っ立っていられるのも気分が悪い。
「は、はい」
真田は慌てて襖を閉めると、布団に座ったままの俺の隣に腰を下ろした。
「で、何しに来たんだ」
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