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きちんと正座する真田は、己の膝を見つめたままこちらを見ようとしない。
「某、嫌なことを耳にしたでござる」
「ah?どんなことだ?」
「政宗殿が……斬られたと」
心の中で、舌打ちする。ほんの半日前の話だと言うのに、武田のところまで届いたということは、他にも広まっているのだろうか。それとも、真田の忍が他より優秀だということか。どっちにしろ、奥州にとっても俺にとってもいいことではない。
「Ha!俺のどこが斬られてるって?」
ここは何としてでも隠し通したい。真田に知られるのが一番厄介なのだから。
「それを確かめに参ったのだが……」
「ah?何……」
急に近づいてきたかと思うと、俺の首筋に鼻を近づけ、犬のようにクンクンと匂いを嗅ぐ。
「血の匂いが致す」
「shit……」
思わず小さく呟いてしまった。近づいて来た真田から少しでも離れようと、頭を逸らす。その動作すらヒビいてしまうくらい傷が深いのか、眉間に皺がよる。
「やはり、嫌なことは当たるものでござるな」
姿勢を元の正座に戻す気はないのか、真田は膝を立てて近づいた状態で話を続けた。
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