Neid

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「っ…!!ぁ…」 包帯の上からそこを軽く撫でられる。傷のせいで敏感になっているのか、触れられて走る痛みに詰めた息が漏れる。その手を弾こうと右腕をゆっくり動かし、脇腹を撫でる真田の左腕を掴むが、力が入らない。 「政宗殿、某の与り知らぬところで傷を作られるな」 「Ha!俺は戦に出てるんだぞ?そんなこと、誓えるわけがねぇ」 「政宗殿なら、出来るでござる」 痛みを我慢して喋ったと言うのに、真田はにやりと、戦場で戦っているときのような笑みを浮かべた。挑発、されている。わかってはいたが、同じようににやりと笑い返すしかできなかった。嫌な汗が額に滲んできた気がする。 「失礼致す」 傷に触れていた手は離れ、俺の背に添えられたかと思うとゆっくりと布団の上に倒された。 「…は、ぁ」 その簡単な動作すら傷をつつくような痛みに変わる。横になると、先ほどよりも幾分呼吸が楽になった。 一息つくと、覗き込んでくる真田の瞳を捉えた。 「真田、もう帰れ」 「こんな状態の政宗殿を置いて帰れるわけがない」 「俺なら、小十郎を呼んでくれればいい」
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