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5日前…。
俺はいつも通り二日酔いで言うことのきかない体を気力で動かし、店のトイレ掃除をした。
ミーティングを終え、営業時間の開始とともに、従業員一同、入口付近に並ぶ。
「いらっしゃいませー!」
俺は大きな声で言った。
もちろんその場にいた全員が言った。
最初のお客様ご来店である。
長身のサングラスをかけた女性。
明らかに高そうなアクセサリーで全身をつつみ、扉の外から入った空気が、女性の横を通りすぎると同時に、とてもいい香りがした。
以前にTVで見た、ホスト番組で、高級シャンパンを入れている女性と同じようなオーラを感じ、少しドキッとした。
内勤の男がすかさず声をかける。
「ご来店ありがとうございます。
当店は初めてでございますね。
大変失礼なのですが、初来店のお客様には身分証の提示をお願いしております。」
女性は無言で免許証を渡した。
内勤もそれを無言で確認すると数秒後…
「ありがとうございます。
ご要望の男性はおりますか?」
女性はぐるりと見渡し、ひと言。
「誰でもいいわ。」
見渡された時、少し目をそらしてしまった自分の度胸の無さが情けない。
特に期待はしてないのだが…。「かしこまりました。
それでは席へご案内いたします。
花子様。」
とても素敵な名前だと思った。
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