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「待ちなさい」
「ぅ、わ!」
自室に戻ろうと踏み出したところで、右手を掴まれて後ろに引かれる。進もうとした身体はバランス崩し、後ろに傾いた。
「そんな顔で、どこにいくんです」
背中から、骸の熱が伝わる。俺の心臓はドクドクいってて、骸に伝わってしまうのではないかと、恥ずかしくて頬が熱くなる。
「な、に」
「君は、僕を乱すのが得意みたいですね」
後ろからのびてきた腕は、俺をすっぽり包んでしまった。
ふわりと香るのは、久しぶりに嗅ぐ骸の匂いだった。
「え…」
ドクドク、ドクドク。早い鼓動は1つではなかった。
「全く、長期でここを離れるのは仕事に身が入らないから嫌なんです」
こつん、と肩に当てられた骸の額が、喋る度に振動を伝える。
「むく、ろ…?」
「次からは、一緒に行って貰いますからね」
俺を包んでいた腕にぎゅっと力が込められた。
「ああ、そうだな」
その方がいい。
身体に回されている骸の腕に触れ、指に少し力を入れる。骸のこんな切羽詰まった声なんて聞いたことがなくて、フフっと笑みが零れた。
END
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