第一章【桃色少女】

4/32
前へ
/78ページ
次へ
自宅から駅まで10分。 電車に5分間揺られて、着いたらまた走って5分弱。 ようやく見えてきた校門には、ジャージ姿で若干メタボ気味の教師、通称チョメ先生(本名熊野)が仁王立ちで私を待ち構えていた。 チョメ先生は私を見るや否や、鬼のような形相で怒鳴り出した。 「ちょっオメッ、藤原ァ!また遅刻か!」 「ハァ、ハァ……あっ、チョメ先生、おはよー。ハァ、珍しいね、先生も遅刻?」 「そうなんだよまったく、最近朝が辛くて……って誰が遅刻するか!お前みたいなののお陰でおちおち朝礼にも出席できんわ!」 「いや、朝礼くらい普通に参加しろよ。まぁどうでもいいけど」 「ちょっオメッ……まだ話は終わってないぞ!」 チョメ先生の脇をダッシュで駆け抜けると、伸ばしてきた手を振り切ってさらに加速する。 よし、校門クリア。 てかチョメ先生を横切る時、強烈な悪臭が……。 「おい藤原ァ!あとで職員室に来るんだぞ!あとお前の彼氏にも『今日の委員会忘れるな』って伝えとけ!まったくお前ら二人揃って問題ばかり起こして……!」 あーあーあー聞こえない、聞こえない。 背後から叫ぶチョメ先生の声に耳を塞ぐ。 つーかあいつは別に彼氏じゃねぇし。 ただの幼馴染みだし。 ふざけんなし。 疲労感たっぷりの体に鞭打って校舎へ突入した。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加