第一章【桃色少女】

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誰もいない廊下を爆走する私は、鳴り響くチャイムに一層の焦りを覚える。 頑張れ頑張れ! 出来る出来る!絶対出来る!頑張れ! もっとやれるって!やれる! 気持ちの問題だって! 頑張れ頑張れそこだそこだ諦めるな! もっと熱くなれよおおおおおお!! 「ギリギリセーフ!誰がなんと言おうとセーフ!!」 「残念アウト、試合終了だぞ藤原。今のチャイムは1限開始のチャイムだ」 「アウチッ!」 教室の扉を開けたら脳天に出席簿の角が降ってきた。 私は死んだ。 艶のある黒髪を一つに括ったスレンダーな教師、通称うーちゃん先生(本名卯月)の担当科目は英語。 「そうか……私は逆転負けしたらしい」 「逆転もなにも、ノーヒットノーランの完全試合だ」 「なっ!私の剛速球が攻略されたとでも!?」 「毎日毎日ワンパターンなストレートじゃ打たれて当然だ。私は速球より変化球が好きだしな」 「くっ、うーちゃん高校……侮れん!」 「はいはい、言い訳はいいから早く席に着け」 「はーい」 ノリの良いうーちゃん先生との茶番劇を終えると、私はまっすぐ自分の席へ向かった。 クラスの奴らで何人かはクスクス笑ってた。 後で絞めてやるから覚えとけよ、と殺意たっぷりの視線を数人に送っといた。
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