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誰もいない廊下を爆走する私は、鳴り響くチャイムに一層の焦りを覚える。
頑張れ頑張れ!
出来る出来る!絶対出来る!頑張れ!
もっとやれるって!やれる!
気持ちの問題だって!
頑張れ頑張れそこだそこだ諦めるな!
もっと熱くなれよおおおおおお!!
「ギリギリセーフ!誰がなんと言おうとセーフ!!」
「残念アウト、試合終了だぞ藤原。今のチャイムは1限開始のチャイムだ」
「アウチッ!」
教室の扉を開けたら脳天に出席簿の角が降ってきた。
私は死んだ。
艶のある黒髪を一つに括ったスレンダーな教師、通称うーちゃん先生(本名卯月)の担当科目は英語。
「そうか……私は逆転負けしたらしい」
「逆転もなにも、ノーヒットノーランの完全試合だ」
「なっ!私の剛速球が攻略されたとでも!?」
「毎日毎日ワンパターンなストレートじゃ打たれて当然だ。私は速球より変化球が好きだしな」
「くっ、うーちゃん高校……侮れん!」
「はいはい、言い訳はいいから早く席に着け」
「はーい」
ノリの良いうーちゃん先生との茶番劇を終えると、私はまっすぐ自分の席へ向かった。
クラスの奴らで何人かはクスクス笑ってた。
後で絞めてやるから覚えとけよ、と殺意たっぷりの視線を数人に送っといた。
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