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どうして、どうして、どうして?
なんで、なんで、なんで?
この辺り一帯は生物が生きていくのに適した環境ではない。
数え切れない生物やその住家を葬り去り、人間が人間のために造り上げた文明を象徴したコンクリートジャングルのはず。
それに、私の知る限りではここ最近、動物園から危険な生物が脱走したというニュースもなかったはず。
いや、それ以前に――――。
“アレ”は何?
「はぁ、はぁ、はぁ……!」
私が何かした?分からない!
どうして追われているの?分からない!
「誰か……!」
一つだけ分かることがある。
――――“アレ”に捕まったら、
「助けてっ!」
私は、死ぬ。
とても綺麗な、満月の夜だった。
陸上部の部活動が長引いて、しかも校舎に明後日テストがある科目の教科書を忘れたことに気付き、私は友達と別れて校舎に戻った。
教室のカギが閉まってたり、教員に見つかって説教されそうになったりと悪戦苦闘した末、校舎を出た時にはすっかり日が暮れてしまっていた。
学校から駅まで徒歩10分。
携帯で時間を確認したら、6時50分だったのを覚えてる。
私は桜並木の続く道を歩いていた。
空に雲はなく、直に降り注ぐ月光が夜桜を幻想的に輝かせた。
そこに“そいつ”はいた。
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