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入学式が終わると、クラス発表が昇降口の脇に掲載された。
私立翠嵐学園は幼稚舎から大学院まで一貫している。
俺と茜が進学したのは高等部。
入学式に参加した生徒のほとんどが中等部からの持ち上がりだ。
内部だと進学は楽なのだが、外部は難しい。
何故、俺達が高等部から翠嵐学園に進学したのかは、家から近いため。
それとある程度の成績を維持していれば、スムーズに大学に進学できるからだ。
実は、翠嵐学園は律兄貴の母校だ。
律兄貴も高校から翠嵐だったけど、大学は公立に進学した。
理由はもちろん、和臣さんと同じ大学に行きたかったからだ。
成績も良かったので、外部の大学進学に問題はなかった律兄貴だけど、学校側は泣きながら必死で引き止めたらしい。
入学式の前日、律兄貴からあるメールをもらったのだ。
それは、律兄貴の親友である結城亮輔【ユウキリョウスケ】さんが翠嵐学園の教師だという話だ。
何でも、結城さんから律兄貴に『今年の新入生のクラスを受け持つことになった。』という連絡があったそうで、俺と茜に伝えてくれたのだ。
結城さんとは何度か面識がある。
大学卒業後は大学院へ進学し、博士号を取得したと聞いた覚えがあった。
何の博士号とまでは聞いていないけど、取得した理由が『取れると思ったから。』の一言だったらしい。
(取れるからの一言で博士号を取った結城さんって・・・。)
博士号を取得したにもかかわらず、教員になると言ったのはその後すぐ。
理由は、恋人のいる職場の近くで働きたいから。
これまた俺は驚きを隠せなかったのだが、結城さんの恋人は年上の男性だ。
しかも翠嵐学園大学部で文学を教えている教授で、結城さんが大学に進学をしたのを機に同棲。
現在も一緒に住んでいるらしい。
(俺の周りってどうして・・・。)
複雑な人間関係と家庭環境(?)である。
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