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昇降口の脇に張り出されたクラス分け表で自分の名前を確認した俺は、すぐに行動した。
俺のクラスはA組。
茜はD組と離れた。
当然だろう。
双子で同じクラスは勘弁して欲しい。
同じ中学校から進学した人間が少ないせいか、俺のクラスには知っている人間の名前が一つもない。
(うわあ。っていうことは、内部学生が多いのか?)
不安を抱きながらも廊下を歩いていた俺は、教室に着いた。
中に入ると俺は妙な納得をしていた。
やはり内部進学が多いのか、既にグループが決まっている。
特に女子は五グループに分かれており、外れているのは外部生だと一目瞭然だ。
一方、男子の方は固まっているグループがあるものの、まだらになっている。
教室に入り、黒板に掲示されている席順を確認すると、俺は席に座った。
前からも後ろからもちょうど良い席だ。
カバンを机の上に置いて、フウッと一息を着くと後ろから声を掛けられた。
「あれ?もしかして、南中の菅生か?」
「えっ?」
苗字を呼ばれて、俺は背後を振り返ると目を大きくして驚いた。
なんと、俺を呼んだのは中学のサッカー大会で対戦したことがあるチームのキャプテンだからだ。
(こいつも翠嵐に入ったのかよ!)
今でも憶えている。
準決勝で、俺はこいつからボールを取ることが全く出来なかった。
そして最後の大会で、大敗したのである。
「久し振りだな。元気だった?」
「ああ・・・。」
「ああ、ごめん。俺は鷺沼中学の城島仁【ジョウジマヒトシ】だ。よろしく。」
「よろしく。」
「良かった!知らない顔の奴ばかりで焦ったよ。」
「・・・・。」
「俺のことは『ジン』って呼んでくれよ。」
「ああ。」
「俺は苗字で呼ばせてもらうよ。実は、菅生の名前が俺の姉貴の呼び名と一緒なんだ。悪いな。」
「別に構いはしないけど。」
気さくに笑って話しかけてくる城島に対して、俺は余所余所しい態度になっている。
城島はあの時の試合を覚えていないのだろうか?
俺はお前に全く歯が立たず、何も出来なかった。
それが悔しくて泣いたのに、どうして普通に接してくるんだろうか?
複雑な心境だった。
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